
ウマイヤード・モスクの北側、裏手にあるのがサラディン廟。チケットを買うとモスクだけでなくこちらにも入場できる。もちろん肌見せ・髪見せ厳禁なので例のコートとスカーフで武装する。
サラディンはイスラムの英雄である。遺跡巡りをしていても、何かとサラディンの話が絡んでくることが多い。ガイドさんたちもサラディンについて語るときはとても誇らしげだ。
情けないことに、私はサラディンという人物を映画(Kingdom of Heaven)でしか知らなかった。作中で彼は聡明なイスラムの王として描かれており、演じた俳優(シリア人の映画俳優・監督、ハッサン・マスード)も貫録があった。「イスラムの偉大な王」程度のぼんやりとしたイメージしか持っていなかったが、回教徒たちの口から語られる彼の姿に、日本における坂本龍馬、勝海舟といった歴史の賢者、そして英雄に近い印象を持った。
彼らにとって、サラディンは永遠のスターでありヒーローなのだ。
これは余談であるが、私は趣味でバラを育てており、最近は特に丈夫なアンティーク・ローズに食指を伸ばしつつある。品種を選ぶ際に色々と調べるのだが、アンティーク・ローズの系統のひとつにダマスク・ローズと分類される一群がある。
名の由来はもちろん古都ダマスカスなのだが、ガイドさんの話によると、サラディンが数百本の苗木を十字軍に寄贈し、それがヨーロッパに渡りダマスク・ローズとして広まったらしい。
こんな乾いた灼熱の地にバラが育つのかと最初は半信半疑だったが(バラの原種の中にはイラン原産とかもある)、ダマスカス市内はもちろん、シリア、ヨルダンあちこちの街でがしがし花を付けているバラ達を見掛けた。中には古びた民家の庭先でクイーン・エリザベス並に巨大化し、尚且つ花束みたいにピンクホワイトの巨大な花をどっさり咲かせているバラもあった。あれなんて品種なんだろう。ほしい〜! 鉢植えで数日水やりしなくても枯れなさそう!

話をサラディンに戻しましょう。
上の写真はサラディン廟の内部に納められたサラディンの柩だ。(身内が写っている写真しかなかったのはご容赦願いたい) 不思議なことに、サラディンの柩はふたつある。もうひとつは写真の左にちょっとだけ映っている。手前の柩はドイツの神聖ローマ皇帝から贈られたという。大理石で葡萄の装飾が施された豪華なものだ。敵対しているはずのキリスト者からこれほどの柩を贈られたというエピソードからも、彼の偉大さが伝わってくる。

